油性ウレタン塗料と水性ウレタン塗料の違い

油性ウレタン塗料

環境保全の観点から塗料業界は水性化へ進んでおり、ウレタン塗料も水性ウレタン塗料が一般的になってきました。
しかしまだウレタン塗料といえば油性ウレタン塗料を想像する方も多く、施工現場においても多く利用されています。
一般的にフローリング用の油性ウレタン塗料は、1液型油変成ポリウレタン樹脂塗料を指します。これは、樹脂(乾性油またはアルキド樹脂とイソシアネートを反応させたもの)と乾性油を主成分とし、空気中の酸素を吸収して酸化重合します。塗料中に遊離のイソシアネートを含んでいないため、毒性が少なく未だによく使用されています。

他に溶剤を使用したフローリング床用の塗料として、ポリウレタン樹脂が空気中の湿気と反応して硬化し、無色透明で堅い塗膜を形成する湿気硬化型ポリウレタン塗料、別の容器に保存された主剤と硬化剤の2液を使用前に混合することで、ウレタン架橋し堅い塗膜となる2液型ポリウレタン塗料とがありますが、最近ではあまり用いられることはなくなってきました。

一方、水性ウレタン塗料は、水溶性の樹脂を使用し、原料に少量の有機溶剤を含む場合もありますが、臭いが少なく環境に優しい塗料です。

塗料種類溶剤含有量主要溶剤
1液型油変性ポリウレタン塗料45~55%ミネラルスピリット 等
2液型ポリウレタン塗料60~75%トルエン、キシレン、酢酸エチル 等
水性ウレタン塗料5~15%アルコール、グリコール系溶剤 等

※上記表は一般的な例です。近年では溶剤含有量5%未満の水性塗料が多く見られるようになってきました。

VOC対策により水性ウレタン塗料

近年では、VOC(volatile organic compounds=揮発性有機化合物)への対策が社会的にも叫ばれています。VOCとは、揮発性を有し大気中で気体状となる有機化合物の総称で、トルエン、キシレン、酢酸エチルなど多種多様な物質が含まれます。
水性ウレタン塗料は溶剤含有量が少なく、環境にやさしい塗料です。弊社が推奨する”Bona”の水性ウレタン塗料は、VOCが5%以下とその中でも特に環境面に配慮した塗料です。

国内外での油性ウレタン塗料の規制

オランダでは10%以上溶剤を含む塗料の販売禁止、アメリカでは溶剤成分はすべてラベル記載を義務づけ、EUでも新たにVOC規制の基準が設けられようとしています。
国内では、国土交通省がシックハウス対策強化のために建築基準法を改正し、ホルムアルデヒド発散等級を定めましたが、世界では確実にVOCを規制する方向で進んでおり、国内の現行法ではホルムアルデヒドしか規制していませんので、まだ油変成ウレタン塗料も広く使用されていますが、近い将来状況は一変するかも知れません。

強い溶剤臭

また、油性ウレタン塗料は多くの溶剤を含んでおり、強い溶剤臭があります。 塗布直後や乾燥中はもちろんのこと、乾燥後も施設内には溶剤臭が立ち込めます。作業中は、同じ施設内にいるだけで気分を害する場合があり、基本的には無人施設での施工になります(学校を仮定した場合、体育館で油変成ウレタン塗料を塗布していると、その溶剤臭のために学校内にいる先生や職員方が鼻をつまんで見に来られる風景をよく目にします)。
ホルムアルデヒドを含有していないとはいえ、この強い溶剤臭のために使用を嫌う施設も少なくありません。都市部では、学校の休み期間中に油変成ウレタン塗料を塗布していたら、その強い溶剤臭のために近所からクレームが殺到し、作業を中断せざるを終えなかった事例もありますので、住宅密集地での油性ウレタン塗料の施工は難しいのが実情です。

油変成ウレタンと水性ウレタンのメリット・デメリット

油変成ウレタン塗料水性ウレタン塗料
メリット・ 塗料の価格が安い
・ 作業が早い(工期ではない)
・ 黄褐色
・ 低VOC
・ 環境や健康に優しい
・ 低臭(樹脂臭)
・ 無人でなくても施工可能
・ 不燃性 ・ 無黄変
・ 道具を水で洗える
・ 下地との密着性に優れる
デメリット・ 強い溶剤臭
・ 約半分が溶剤
・ 発火のリスク
・ 道具はシンナー洗浄
・ 塗料の価格が高い
・ 気温や湿度の影響を受けやすい

油変成ウレタン塗料のメリット・デメリット

油変成ウレタン塗料を使用する場合の、最大のメリットは価格です。作業が早いのは、工程そのものの数が少ないだけであり、工期そのものには影響がありません。
油変成ウレタン塗料は、クリアとはいえ塗料そのものが黄褐色をしており、塗膜も当然黄褐色となります。また古い塗膜はどんどん黄変が進んで色が濃くなり、体育館のコートラインなどは目立ちにくくなります。デメリットだと思いますが、この色合いを好むお客様もいらっしゃいます。

油変成ウレタン塗料のデメリットは、VOCを多く含むことと、その強い溶剤臭です。
また、塗料そのものの発火点が低く大変燃えやすい危険な材料でもあります。
使用した道具はすべてシンナーで洗わなくてはいけません。もちろん手についたベタベタ感も、シンナーで洗わないと消えません(それでもなかなか消えませんが)。

水性ウレタン塗料のメリット・デメリット

水性ウレタン塗料の最大のメリットは、低VOCです。わずかな樹脂臭しかなく、稼働中の施設においても作業が可能です。また、無黄変ですのでフロアをいつまでも明るく保ちます(商品によっては、黄変する水性ウレタン塗料もあるようですので、ご注意ください)。

デメリットは高い価格のみならず、水分を含んでいますので、気温や湿度の影響を受けやすいことです。高温時には乾燥が早過ぎレベリングが不十分となり、発泡が抜けきらずに残るなど仕上がりに影響が出る場合があります。湿度が高ければ、乾燥に時間がかかり過ぎケバ立ちがひどくなる、仕上がりの光沢が不均一になる場合があります。低温時には凍結のリスクだけでなく、塗膜が厚くなり過ぎる、レベリングが不十分で大きな気泡跡が残る場合があります。塗料や施工法によって解決できる場合もありますが、水性の塗料ですので、温湿度の影響を受けやすいことは仕方のないことかも知れません。ただし、現在では凍結の恐れを除いては、対応可能なレベルまで弊社では見えてきています。

これらの特長を考えた場合、水性ウレタン塗料は凍結の恐れがある場合を除いてはほとんどオールマイティーですが、油変成ウレタン塗料は限定したケースでしか使用できません。

油変成ウレタン塗料を使用しても問題にならないケース
 新築工事中または改装工事中で、施設が完全にクローズされている場合
 少々の溶剤臭が近隣に漏れ出ても、騒ぎにならない地域

また従来は、水性ウレタン塗料は油変成ウレタン塗料と比較して塗膜の耐久性や耐摩耗性に劣ると噂されてきましたが、弊社が推奨するBonaの水性ウレタン塗料は、従来の油変成ウレタン塗料と比較してもより強靱な塗膜を形成しますので、歩行量の多い商業施設などでも安心してご利用いただけます。